続々々・オランダ(Arthur Ebeling編・その2)

時刻は18時、まだまだ陽は上にあって明るいし、お祭りムードも最高潮。
オレンジのアムスに再び舞い戻った。


Arthur Ebelingを巡る旅、第2の場所はアムス中心街にあるニューマルクト広場。
地図を片手に「たぶんここ?」と広場内に足を踏み入れた途端、それが“正解”だとわかった。
視界の左側、アーサーも自分の座る椅子を持参しながら丁度同時に会場入りしたのだ。
この偶然にはアーサーもオレ達も笑った。
“アーサーを巡る旅”ではこの偶然が多かった。
オレ達はそれを“運命的”と称してハシャいだ。

アーサーバンドのベースRonald de Jongもオレ達に気づき手を上げてくれた。
もうすっかり“お馴染みさん”だ。

この広場ではいくつかのテントが張られ、それぞれの場所で時間差のライヴをやっていた。
オレはアーサー達に厚かましくベッタリで話しかけたり、気を遣わせたりしたくなかったので
少しの時間アーサー達がステージをやるテントを離れていた。

そろそろいいか?と、(暑かったのもあって)テントに戻って後の方のベンチに座っていた。
するとベースのRonaldの方からオレ達に近寄ってきた。
彼は“ナイス・ガイ”と呼ぶに相応しい風貌だ。

「ビールを飲むか?」と誘われた。
そして彼が代金を払おうとした。
しかーしっ!ここは最後のサムライ・浦田健志。
彼に代金を払わせるわけにはいかない!
“かたじけないっ”ってやつだ。
ポケットから金を取り出そうとしたその手を制してオレが払った。
そう、オレが彼に奢ってやったのだ。

オレが、Ronaldに、ビールを
奢ってやったのだ。

“ナイス・ガイ”競争ではオレが一歩抜きん出たに違いない。
その後、やはりオレも“ナイス・ガイ”だったと知る時が来る。

「アーサーとは20年の付き合いで、アーサーはよくジョークを言う楽しい奴だよ」と言っていた。
「日本に行ったことはない」とも。
「日本でライヴをやってください」と言ったら「オーガナイズされてるから中々実現は難しいなぁ」とも。

こうしてRonaldと色々話しをしている間、オレはずっとセッティングの状況を気にしていたのだが、
ステージが始められそうな用意が整い「もうそろそろ」とRonaldを促すまで、
それに気づかなかったほどオレ達に付き合ってくれた。

一歩抜きんでた感のある、そして
奢ってやったオレから言わせても
彼はその風貌に違わぬナイス・ガイだった。



テント内のステージが始まる。
そこは6畳・6畳・6畳を合わせたくらいのサイズ。(日本人感覚)
人が集まってくる。
最初は一番後ろで観ていたけど、我慢できずに前へと移動した。
ステージのすぐ傍、左側。
アーサーの目の前は意識的に避けた。
馴れ合いの感じになるのは嫌だったからね。

それでもドラムのBoyd Smallが時々目配せをくれる。うれしかったな。

客の年齢層は比較的高い。
と、いうよりも年齢の高い人の楽しみ方の方が目立っていた。
楽しそうに踊ってるんだ。
しかもおしゃれでかっこいい。
いちばん目を惹いた水の江滝子風のおばさまなんて60才は軽く超えてるんじゃないかな?
身のこなしが綺麗でね。
“傍から見て”とか“みんながこうだから”とか無いの。
自分のために自分のスタイルで楽しむことを知ってる人が多い。
そして、それはそこの雰囲気を壊してないし、誰の気分も壊さなかっただろう。
みんなハッピーに楽しんでるんだ。

その水の江滝子に踊りながら聞かれた。
「Old Rock'n Rollは好き?」と。
答えはもちろん「Yes ! sure !」
可愛らしいウィンクを返してくれた。

又、ちょっとだけハシャギ感がある、ホームレスぎりぎりの感じの奴。
人と人の間、また知人ではない人と抱き合って踊ってたりしていた。
でも危険性は微塵もなくハッピーな笑顔だ。
やがてオレ達の方にも近寄ってきた。
「どこから来たんだ?」と聞くと
「カリブだ」と応えた。
「Oh カリビアン!ボブ・マーレー!」と言うと、
「Yes ! of course !」と誇らしげに応えた。

ホームレスぎりぎり?の奴だったけど、ハッピーな奴だったので嫌な気はしなかったし、
他の誰もも受け入れていた。



こいつとは翌日も会うことになる。
仮設遊園地があったダム広場では解体作業が進んでいて、昨日までの華やかさはもうない。
その場所が見渡せる場所でオレ達同行者同士は待ち合わせをしていた。
左下方向から感じる視線。
見た。
昨日のカリビアンが地べたに座ってオレを見つめていた。
「おーっ、カリビアン!」また握手。
やはりホームレスだった?と思ったのでガッチリ握手するのはちと腰が引けたが・・・。

このカリビアン、昨日の元気と笑顔は感じられなかったな。
こいつはその後も体育座りで解体作業が進む仮設遊園地があった場所を寂しそうに眺めていた。
楽しかった昨日を思い出していたのかな?


ステージに戻ろう。
アーサーの曲は、アーサーが以前やっていたバンド「Jump Dickie Jump」の1枚と
ソロになってからの「A Rainynight in Paris」1枚中の曲しか知らない。
プレイした曲ではJump Dickie Jump時代の曲は1曲もやらず、知らない曲の方が断然多かったけど、
そこらへんはあまり支障なく、また考えることなく楽しめた。
それが“Good Old Rock'n Rollスタイル”の音楽だからね。

第1の場所のいささかほんわかムードとは違って、観客もノリノリなもんだからアーサーだってノリノリだ。
唄っている時は座ってるんだけど、ギターソロになると立ち上がり、ステージを降りて弾いていた。
これがまた、めちゃ上手なんだよ。

観客がアーサーを立たせたんだね。
ステージとはそういうもの。
プレイする側が一方的に作るものではない。
プレイする側と観客側の相互関係で出来上がるものなんだ。
ある種、それはバトルでもある。
サッカーでもアウェイとホームでは戦績が分かれるでしょ?そんな感じ。
観客に後押しされるんだね。


ノッてるオレ、見るアーサー。


ステージが終わった。
今度はドラムのBoyd Smallが話しかけに来てくれた。
Ronaldを“ナイス・ガイ”と呼ぶなら、Boyd Smallは“クール・ロッキン・ガイ”と呼ぶのが相応しい。

彼は今夜の第3の場所には行かないと言う。
Ronaldもそう言ってた。
「“ファニーなロックンロールバンド”を組んでいて日曜にライヴがあるんだけど」
と誘ってくれたけど、その日はパリに行く予定が決まっていたので残念だけど断った。
で、お互いのWeb siteアドレスを交換し合いRonaldと共に握手と感謝をして別れた。
そういえばBoyd Smallと一緒に写真を撮るのを忘れてたな。


そしてオレ達は“メイン中のメイン”と捉えていた第3の場所に移動するのだ。


ダム広場の仮設遊園地


つづきはまたもや今度。
Arthur Ebeling編・最終章。