約束

幼いころに泣いた鮮明な記憶。
小学校1年の時。

その日は日曜日。
生まれた時から同じ区画に育って、家族ぐるみでも仲良しの“ひろちゃん”(同級生)が引越しをする日。

前の日はこの区画の中心にあり、そこに住む人達が“広場”と呼ぶ空間で、
その時2人のお気に入りだったサッカーをして遊んだ。

時間が進んで行くこと・・・それをお互いに知らせないかのように、
そんな物理的なことなどまるで知らないかのように、
暗くなってもそれに気づかないフリして、どちらかの母親が夕食の呼びかけに来るまでボールを蹴り合った。
お互い、「ここで2人が揃って遊ぶことはもうない」と思って時を惜しんでいたんだね。
切なかったな。

その日の別れ際、オレは提案した。
「明日、引越しの前にもう1度ここでサッカーしよう」
もう1度、“思い出”が欲しかったんだ。最後のね。


そして次の日の約束の朝。

目が覚めた。自然に。
あせった。
時間はっ???

約束した時間はとっくに過ぎていた。
オレは母親を責めた。
「なんで起こしてくれなかったんだよ〜っ!」

そして聞いた。
オレ「引越しは?」
母親「もう行っちゃったよ」
オレ「ひろちゃんは?」
母親「遊んでるヒマなんかないよ」

オレは“ひろちゃん”が待ちぼうけを食らって悲しんでる様子を想像した。
オレは絶望感と悔しさで身をよじって泣いた。思いっきり。
「もう会えないんだ」
約束を守らなかった自分を責めた。これも思いっきり。


その夜、母親に連れられて“ひろちゃん”の引っ越した先に行くことになった。
「もう2度と会えない」と思っていたのだが・・・。
引っ越したのは同じ市内の中。
今でこそ何のこともない距離だが、子供の頃の普段のテリトリーから考えたら途轍もなく遠く感じてたのだ。
こうも簡単に会えるなんて思いもしなかった。

昨日までと何ひとつ変わらない母親と、自責の念を思いっきり抱えて緊張してるオレ。
“ひろちゃん”と対面した。

気恥ずかしさと窮屈さを感じながらしばしの時間をやりすごした後、勇気を出して聞いてみた。
「朝、来た?」
そしたらひろちゃん。「行かなかった」
それも普通に言った。
それはオレを思い遣って嘘をついた言葉ではない。
逆に「ん?なんのことだっけ?」みたいな感じだった。

ホッとしたというよりも拍子抜けした。
確かに約束を守らなかったオレも同罪だが、
「なんだったんだ?このオレの思い込みは?」みたいな。


これが記憶の顛末だ。


オレは友達を、そして友達との“約束”ってやつを重んじてきた。
この頃からずっと変わらずにね。
それは“大切”であり、“誇り”でもある。




なぁ、オレとお前が会わなくなる理由があるとしたら、きっとオレはそれを憎み続けるだろう。
それが例え、かつて愛したものでもね。

「真実」という言葉が好きだったお前がオレは好きだった。