「紀香」と「菜々子」と「尾崎」

とにかく、紀香は積極的だった。
「紀香」とは、もちろんあの有名人の「藤原紀香」のことだ。
オレ達は“1学年全員”くらいの単位の大人数で木々の生い茂る高原でキャンプを張っていた。
林間学校気分である。
とはいっても大人だ。「誰が誰と“仲良く”なるか」が興味の大前提だ。
ある種、全時間「告白タイム」のねるとん旅行である。あるいは「あいのり」か。

オレは紀香から完全にマークされていた。
紀香のオレに対するアプローチはすごかった。
他の女子はオレに近づくことさえできないほどに。
大輪を咲かせた向日葵のような自信に満ちた笑顔で
「ね、薪拾いにいこっ!」とか事ある事に、あのダイナマイト・ボディーを体ごとぶつけてくるように
腕を組んできたり密着してくるのだ。
さすがのオレもタジタジだった。
しかし悪い気はするわけもなく、その人目をはばからない潔さには、しこたま魂を揺さぶられた。
テントでの就寝時にだって、「となりで寝よっと」って言いながら体をあずけてくるのだ。
あのダイナマイト・ボディーをだ。あの紀香のダイナマイト・ボディーをだ。
オレの官能に彩られた思考は麻痺状態で、ピンク色の幸せに包まれていた。

しかし・・・、オレはずっと知っていた。
オレと紀香の“2人だけの世界”から少し離れた場所で、
菜々子が常にオレに対して何かを訴えかけるように、
頼りなげに控えめにそっと優しく微笑みかけていたことを・・・。

「菜々子」とは、もちろんあの有名人の「松嶋菜々子」のことだ。



次の日、尾崎豊のコンサートに行っていた。
オレは途中から入ったが、すでに観客は総立ちの状態で興奮に満ち溢れていた。
そして次の曲のイントロが鳴る。
「15の夜」だ。
尾崎はあの尾崎特有の笑みを湛えてこう言った。
「一緒に唄ってくれるかい?」
そして彼はステージを降りて客席に向かってきた。
しかもあきらかにオレに向かって。
彼の笑みはこう言っていた。
「君なら唄えるよね?」
そしてオレの前に立ち、オレにマイクを向けた。
イントロのピアノが鳴っている。
しかしオレは出だしのきっかけを失っていた。
「どこから入るの?」
聞いてしまった。しかもその声はマイクで拾っていた・・・。
観客のちょっとしらけた空気を感じた。
困惑した尾崎は「合図するから」と表情で言った。
そしてあらためて8小節待って尾崎の合図。
オレはやる気マンマンで唄い出した。

“闇の中ぁ〜ぽつんと光るぅ〜”

尾崎、観客の全てが凍りついた・・・。

Oh! Nooooooooooo!!!!!!!

オレは2番の、しかもくりかえしの9小節目から唄ってしまったのだ・・・。

「マジかよ!?ざけんなよっ!」
という顔をオレにだけ残して尾崎はオレの前から立ち去った・・・。


という夢を2日続きで見た。

起きてても寝ててもいい。
素敵な夢を見てくれ!


Merry Xmas !