親のハードルは高い。

1週間ほど前、掲示板のほうに『「説得」日記』と題してこう書いた。

母親のハードルは高い。だが、オレはやるのだ。
オレの一言一言が薄っぺらいものでなく、真実のものだと身を以って示すためにも。」

その『「説得」日記』のその後(いや、あくまでも途中経過だな)を
掲示板だと長くなっちゃうので簡単にだけどここに書きます。

「骨髄バンク」って知ってるだろうか?
オレはそこに登録している。もう7、8年前になる。
登録したきっかけはほんとに単純。TVを見てのこと。白血病に冒された女性のドキュメンタリー。
彼女はバレリーナ。すごく笑顔が綺麗な人でね。
だけど、ドナー(骨髄提供者)が見つからないと「死」を待つしかない体。
薬で髪の毛も抜け落ちててね。彼女の心の闇は計り知れないけれども、表面的には卑屈になることもなく、
生きる望みを信じてるし、すごく生きたがってるし、そしてまた踊ることを夢みてる。
結局、彼女はドナーが見つからずに亡くなってしまったんだけど・・・。

もしかしたら、それが「笑顔が綺麗な女性」だったからかもしれない。
もしかしたら、それが「きったねーおっさん」だったら心は動かなかったかもしれない。

オレは想像した。
もし、オレが彼女のドナーで(実際は、患者とドナーはお互いの名前すら知らされることはない)骨髄を提供して、
手術が無事成功して、彼女が生きる未来を手にして、元気になってまたバレエを続けることになったら・・・。
生きていたいのに、死を待つしかない人がオレをきっかけに生きることができたら・・・。

そんな素敵なことはない。
そう思った。

それからすぐにひとりで登録に行った。
当時はまだ「骨髄バンク」なんてあまり知られてなくて(知り合いの看護婦さんでさえ知らなかったくらいだったんだ)、
自分で調べたり友達の情報を得て登録しに行った。
なんか気分良かったよ。
「オレ、悪いやつじゃないな」なんて思ったりして。
病院(赤十字)の帰り、気分も天気も良かったもんだから少し長めに散歩がてら歩いたのね。
途中、自販機で缶コーヒーを買ったらさ、おつりが200円くらい多く出てきたの。実際は取り忘れだろうけど。
「やっぱ、いいことすると返ってくるなぁ〜」って思ったもんね。

ま、話しは戻すけど。
その初期登録から「適合する可能性がある」という2次検査を経て、今回(2次検査から何年も経って)
「患者さんと適合しました。ドナー候補者のおひとりに選ばれました」という通知が来たわけ。
意志確認の書類と共にね。
オレはその通知を見て「やっと来た〜」という喜びの半面、少しだけ「死」の可能性を思って恐くなったよね。正直。
骨髄採取手術は今では「きわめて危険性は少ない」と言われてるけれど、
“全身麻酔”だし、過去の死亡例も確かにある。
でも、オレは「きわめて危険性は少ない」を選んだ。迷いはない。

意志確認の書類を提出すると、検査に入って、
何人かいると思われる「ドナー候補者」の中から1名を決定していくという流れなんだけど、
最終のところで親近者の同意が必要になるのね。
で、「親の説得」ってわけだ。

登録した時でも渋い顔をしていただけに、やはりハードルは高かった。
最初から反対の姿勢。
でも、とりあえず「危険率が低い」ということを話し、書類を渡し「もう少し考えてくれ」ということで保留にした。
その間、インターネットから他の情報をプリントアウトして渡したりもしてね。

急かしてもなんだからと、ちょうど1週間待ってオレから尋ねてみた。
反対の姿勢は強固になっていた。半分以上怒りながら。(正しいことをしようとしてるのになんで怒る?)
そうなったらオレの話しなんか聞いてくれない。
おまけに親戚にまで話しが行ってややこしくなっていた。
オレはその場で親戚に電話をかけた。同じく反対の姿勢。

どちらも“最悪”のことを含めて悪いほうばかりに頭が行っている。
あげくにはオレの生活態度にまで話しは飛び火する。
オレの“意志”を認めた上で、そこに向き合って話しをしてくれているわけではない。
オレが「どういう人間でいたいか」なんてことの話しは聞こうとしないし、どうでもいいらしい。

わかるよ。そりゃわかる。
少なからずも「生死」の可能性が関わってくるわけだからね。
後遺症の心配もね。身内としたら当然だろう。

それはわかるけど、オレは悔しかった。
何が悔しかったかというと、オレの“意志”と向き合う準備もなく、
そこをないがしろにして頭から反対だったから。
言っておくけど、オレはボランティアとか、チャリティーとかに興味があるわけじゃないのね。
「良い人」と思われたいなんてことも思っちゃいない。軽はずみで選んだことでもない。

ただそこには“意志”があった。
「そういうことをできる人間でありたい」と思っている。
オレはほとんど、そういう“意志”で生きてきた。
でもオレが「オレの生き方は・・・」なんて主張しても、それは理解できにくいだろうということもわかってる。
だって親に「生かされてきた」わけだからね。
それでも、そこを無視されたように思えて悔しかったし、虚しかった。
無力さも感じた。涙さえも流したよ。

でもね、書類は提出した。
提供の意思があるということでね。
一応「親近者の同意を得るのは難しい」のところに〇をしたけどね。
最終同意までにはまだ時間があるから努力はするつもり。
ここで引き下がったり、恐がって辞退したとしたら一生後悔することになる。
例えばオレが「愛」という言葉を口にしたとするだろ?
全然、意味を為さなくなってしまうような気がするんだよ。


オレはね、ほんとに強くて、ほんとに優しい人になりたいんだよなぁ。