ひとつ屋根の下

その日オレは、実家で寝転がってTVを観ていた。
大好きな長嶋茂雄とさんまちゃんの対談。

そこで母親が酔っ払って帰宅。
するとやたら楽しそうに喋りだした。
オレが真剣に長嶋茂雄とさんまちゃんの対談を見ているのに。


話しのあらましはこうだ。
その日は、中学時代からの“悪友”と飲んでいたが、その“悪友”が情報を仕入れてきた。
昔よく、石原裕次郎や寅さんのものまねでTVに出ていた中学時代の同級生が、
柴又(寅さんで有名な)でスナックをやってる。とのことだ。
「突然行って驚かしてみよう!」と、この老年不良2人組は考えて実行した。
なんと会ったのは40年振りだったらしい。
さぞかし盛り上がったことだろう。
母親は明るい性格だし、息子のオレと同じくして
「盛り上げることは自分の使命」くらいに思ってる人である。

しばらくすると新しい客が入って来た。
そうとう飲んでたらしいし、そこは“人情下町”である。
そして母親も柴又に程近い「金町」という下町で育った人であり気質である。
話しかけた・・・。
(“都会人”のオレがいたら絶対止めてる。)


〜ここからはかいつまんでの(多少脚色した)会話形式でお送りします。〜

アサ子「どこから来たの?近所?」
客「おいら、金町よぉ〜」
アサ子「えっ!あたしも元は金町よっ!末広通りで末広小学校!」
客「えっ!おいらも末広通りで末広小学校!」
アサ子「末広通りのどこよ?」
客「米屋の隣に果物屋があったんだけど、その隣の染め物屋よぉ〜」
アサ子「なんだとぉぉぉ〜〜!もしかして〇〇ちゃん?」
客「なぬぅぅ〜〜!?なんで知ってんのぉぉぉ〜〜〜?おいら、〇〇の弟の××」
アサ子「××ちゃんなのぉぉぉ〜〜?!あたし、果物屋の篠田よぉぉぉ〜っっっ!」
客「あーーーーーー!!!!アサちゃん???!!!」

ってな偶然があったらしい。これも何十年振り。
そりゃ盛りあがるわな。

その××は今タクシーの運転手さんをやっているのでタクシーで送ってもらって帰宅した。
(飲酒運転じゃないのか?)

送ってもらっての帰り際に言われたらしいよ。
「何かあったら何時でもいいから電話しろよ。いつでもどこからだって送ってやっから。
そのために名刺渡したんだからなぁ!」って。


そんなこんなの話しをオレにしたわけだ。
長嶋茂雄とさんまちゃんが大好きだということを知っていて、その対談を楽しんで見ている息子のオレに。
何度も同じことを繰返しながら。
「それはもう聞いたっつーのっ!」
というオレの言葉にも、長嶋茂雄とさんまちゃんの対談にも気に留めずに。
ホントに幸せそうに嬉しそうに話してた。

「いいよねぇ〜、こういうのって」
「いいよねぇ〜、友達って」
「友達って大切だよねぇ〜」
「おまえもそう思わない?」


むむむ・・・これって、オレがよく言ってることじゃん。


オレはそこから逃れたくて(長嶋茂雄とさんまちゃんの対談も終わっちゃったことだし)そそくさと風呂に入った。

オレは、逃げ込んだ風呂につかりながら確信したね。
「オレはこの人に育てられたんだなぁ」と。

そういえば親父も言ってたっけ。
「おまえは友達が多いみたいだけれど、広く浅く付き合うなよ」と。
「おまえが成長できて、助け合える友達と付き合えよ」と。
「そういう友達がひとりでもいればいいんだ」と。



アサ子!英雄!心配するな!
オレは今んとこOKだ!