う〜ん、ハードボイルド

オレに弟がいた。
そして対面。

幼い時に別れ別れになったらしい。
オレは憶えてもいないし、知りもしなかった。
ただ・・・なぜかは分からないし根拠はないけれど、そんな気がすることはあった。
血を分けた弟の叫びのようなものを感じていたのだろうか?


弟はオレを憎んでいたと言う。
“自分だけ親に育てられやがって・・・”
彼は知っていたのだ。
どこかにオレという存在がいることを。


今の彼には家族がいる。
嫁さんと2人の子供。
憎んでいたけれど、家族と一緒に居るに連れ、それがだんだん薄くなっていったらしい。
だから、こうして対面することにもなった。

彼の“顔”はオレの“顔”とは違う。
表情が歪んでいる。
きっと上手く笑えずに生きてきたんだろう。
心から笑うことなど無かったんだろう。
それはきっと“生きてきた環境”の違い。

それでも時折見せる家族に対する表情はドキリとするほどオレに似ている。
「やっぱり兄弟なんだな・・・」


しかしだ・・・彼の嫁。
さっきから夫の目を盗んではオレに色目を使ってくる。
オレの横を通るその度に体を寄せてくる・・・。
あきらかに誘惑の態度・・・。
「なびいちゃ、いかんぞ!たけしっ!」と自制心。


2人の子供は、すでにオレになついている。
小学生のお兄ちゃんと幼稚園児の妹。

お兄ちゃんは自分が“それ”だということに気付いているんだろうか?
誰も何も言わないけど、オレはわかっていた。
“それ”は見れば誰だって気付く。

お兄ちゃんは・・・・・“人造人間”だということに。

体自体はキューピーちゃんの着ぐるみだ。
キューピーちゃんの顔部分を丸く繰り抜いた場所に人間の顔があるが、
その隙間から覗ける内部には機械の体がある・・・。



そう、“夢”です。寝ている時に見る“夢”です。



続ける。

オレは「弟を、そしてこの家族を、なにがあっても守っていこう」と決めた。

オレは買い物に出かける。
今夜の食事を家で一緒にとるためと、子供たちへのプレゼントを買うために。

オレは正義感を伴う幸せを感じていた。


通りで1人の男とすれ違った。
“何か”得体のしれないものを感じた。
すると、その男の後ろから違うもう1人の男がその男に声をかける。
酔っているのか、ちょっと小馬鹿にした口調で。知り合いらしい。

オレは振り返り、今すれちがったばかりの男を振り返る。
振り返る男。
その刹那、男が右手をスーツの胸ポケットに移動させるのを見た。
ちょうどオレの横まで歩み出て拳銃を取り出し、声をかけた男めがけて撃った。立て続けに2発。

「見てしまった・・・」と思うオレ。
「目撃者として殺される・・・」と恐怖が襲った。

瞬時に「な〜んにも見てないっすよぉ〜」とでも言いたげに目を逸らすオレ。
手を伸ばせば拳銃を取り上げることもできるのに・・・正義感の欠片もない。

続けてその男は、3発目を絶命している男の近くで立ちすくむ“目撃者”の女性に放った。

「やっぱ、目撃者は殺されるのか・・・」とオレ。

それでもまだ目を逸らしてるオレの視界の隅で、男がオレの方向に体を向き変えたのが見えた。

4発目、オレの右肩を襲った。

「やられた・・・」

5発目、右首の頚動脈を貫いた。

「死ぬかもしれない・・・」

6発目・・・オレの右脳あたりを弾き飛ばした。


TV放送の終わりを告げる“ザーーッ”という“砂嵐”のような音がする中で、
さっき会ったばかり、そしてやっと会えた弟の顔が浮かんだ。
オレは“幸せ”と“せつない気持ち”を同時に感じた。


そして、飛び起きた。

夢だとわかっても、とってもせつなかった。
あまりにもリアルに思えた。


う〜ん、ハード・ボイルド。


その夢を反芻しながら、いつの間にかまた眠った。





別の話。

母親とTVを見ていた。
“万引きGメン”の特集。

軽く口にしたオレの言葉。
「万引き、捕まったことねえなぁ〜」

その言葉に反応して素早く顔をオレに向け、母親。
「お前、まだやってんのかーっ!」


マジで怒られちった。

やってねーっつーの。


ハード・ボイルド・ママ。