「遠くまで手を振るように」

親父と話した。電話で。
久しぶりだ。
まったく疎遠になってるからね。


何日か前、留守電に「たまには電話しろよ」とメッセージが入ってたんだけど、
かけるタイミングがなくて放ったらかしにしてたまま、今日かけた。

しかし、留守電に入ってた最初の言葉が「え〜、浦田です」ってなんだ?
オレも浦田だっつーの!(親が離婚して篠田になったけど)

びっくりしたのはさ、その声がオレそっくりなんだよね。
最初、「オレが自分でかけたか?」と思ったぐらい。
オレの声の方が渋いけど。


で、電話した。
「オレ、健志」と。
すぐ息子だとわかってもらって良かったよ(笑)。

入院してたらしい。
「そんとき、健志のこと思い出してさ」と言う。
そしてオレ、「珍しいこと言うじゃん」
親父、「いつも思い出してるよ。俺のこともたまには思い出してくれてるか?」

ちょっと切なかったな。

それに対してオレは言う。
「あったりめーじゃんか」ちょっと怒った感じで。

それしか言えなかった。
それは本当のことだから説明なんかいらない。
オレにとっては当たり前のことだから。

「そうか、それは嬉しいなぁ」と、ちょっと照れた感じで親父は言った。


オレは正直言って親父を“好き”ではないと思う。
尊敬はしてないし、目指す対象でもない。嫌いなところは沢山ある。
だけど、きっと愛してる。

誰にも言ったことはないけど、オレには最大に願うひとつの夢がある。

それは、昔幸せだったあの頃のように、オレとお袋と親父の3人がまた一緒になること。
叶わない夢かもしれないけれど。
きっとそれは、3人の内の誰かが死ぬまで自分の中だけで思い続けることだろうな。



親父が言った。
「この前、見かけたぞ」と。
自宅から1つ先の駅にあるハンバーガーショップで何かを書きとめている姿を店のガラス越しに見たらしい。
一生懸命書いてるから声はかけなかったそうだ。

だけど、そんなところには行ったこともない。
オレは言った。
「それはオレじゃないな。息子のことぐらい判れよ」と。

それに加えてもう一言。
「キムタクと間違えてんじゃん?」


どうやら・・・オレのユーモアは通じなかったようだ。
「キムタクはそんなところに来ないだろ」
普通に応えやがった。


オレは心の中で呟いた。
「トンチが効かねーなぁ〜」




「遠くまで手を振るように」
いつか聴いてもらいたいな。
もちろんアサ子にもね。