お題「神の領域」

残念ながら“神”のことはよく知らない。
でも、“神”に近そうな“天使”なら友達だ。

前に、知り合いの某アーティストの新婚カップルの妻から、
フランスかどっかの海岸で「天使が突然、二人の前に現れてしばらく浮遊してた」
という話しをメルヘンチックな目で語られたことがある。

実はそのカップル、“天使の教え”っぽい新興宗教に足を突っ込んでる二人だったので、
あえてオレも言ってみた。

「オレも天使に知り合いいるよ」
と。

思ったとおり難色をあからさまに見せて完全否定の様相だった。

やっぱ、そういうことね。
「私達みたいな心の綺麗な、しかも幸せな二人だから天使が舞い降りて、
しかも私達だからそれが見えるの。」

ということをアピールしたかっただけなのね。わかってたよ。
しかもその完全否定は“天使”そのものを否定したことにもなる。
ということをわかっちゃいない。


“天使”といったらだいたい、よくある羽が背中に生えた外国人の子供を思い浮かべるだろう。
そのカップルもそれを見たという。

でもオレの友達である“天使”は違う。見た目は普通の人間だ。

「ベルリン・天使の唄」という映画を知っているだろうか?
その映画に登場する天使は、見た目は普通の中年オヤジだ。
普段も人間界で普通の生活をしている。

その映画を見た時、「あ〜、この監督も天使と知り合いなんだな」と思った。
オレにとってはリアルだった。天使を友達に持つオレとしては。

ただ、その映画の天使には羽があり、空を飛んだりするが、
残念ながらオレの友達の天使が飛んだところを見た事がない。
たぶん、オレの知らないところで飛んでいるんだろう。

彼=天使(そう、“彼”だ。)に対して「さすが、神の領域の奴だ」と思うことはたくさんあるが、
いつも感心させられるのが“観察力の鋭さ”だ。

その人は常に物事を俯瞰で見ている。
それは自分のことも、他人のことも、その場の空気も。
(浮かんで見ているから俯瞰でいられるのか?)

だから、他人の心の中もわかるという。

「ねえ、何でそんなにわかっちゃうの?」と聞いたことがある。

「自我を無視すれば簡単なんだけどね」と答えた。

「人間、それができないんだよ」と言っといた。

「そうみたいだね。だから見えやすいんだ。まあ、経験がものをいうけどね」と彼は言う。
見えすぎる分、彼は傷つくことも多い。

でも、自分勝手に傷ついてるわけではない。結果として、自分が傷つく役割を引き受けてしまう。
常にそれを背負うことが使命だとも思っているようだ。

優雅にフワフワ舞ってるような無邪気な天使を想像してはいけない。
オレのような普通の人間から見たら、彼の心はきっとボロボロだ。

でも、それは見えづらい。彼の哀しそうな顔は何度か垣間見たことがあるけど。

でも何度その役割を背負って傷ついたとしても、
彼は人を愛する事をあきらめない。

彼の他人に対する愛情の傾け方は常人ではわからないような奥深さがある。
神の領域だ。

決して、わかりやすい優しさは示さない。時にはそれが“いぢわる”と取られることもあると思う。
もしかしたら、天使と悪魔が混在してるのかもしれないとオレも思うことがあるが、
あくまでも悪魔ではない(ちょっとダシャレ)。

悪魔の心はまったくない。

その“いぢわる”と感じることでもベクトルはプラス、あるいは幸福の方向に向かっている。

単にその時だけのその人の心の平穏を保つだけだとか、
その人に好かれたいがための言葉やなぐさめを投げかけたりはしない。

俯瞰で見たらわかると思う。

時にはそんな場面も必要だけれど、
実はそれがその人を足止めさせている“かもしれない”という事を。

“かもしれない”かどうかは空気感でわかるという。
本当の優しさはそこを察知してあげることから始まるとも言う。

それは、まるでライオンの母親が子に対する愛情の示しかたと似てる。

簡単に傷を舐め合うようなそぶりを見せないから時々嫌われることもある。誤解も受けやすい。

だけど、彼は愛することをあきらめない。

なんのために?と思うこともある。

だけど、少しわかる。
“傷ついた分だけ優しくなれる”というのはどうやら本当のようだ。

優しくなれないのは、自我で傷ついてるだけなんだ。彼を見てるとそう思う。

悲壮感は微塵も感じさせないところがまたニクイ。

「大変だね」と言うと「まあね」と肩をすくめて答える。
そして、「ぼくみたいに長年天使をやってると、
いつまでも無邪気な天使を気取ってるわけにはいかなくなるんだよね」と言う。
まったく彼は
タフでクールでそしてヒューマンタッチな奴なんだ。

「君にもできるよ」
とよく言われる。
「そしたら君も天使になれるかもね」と笑いながら。

なってもなれなくてもいいが、人を愛することをあきらめることだけはしたくないと思う。

彼ともずっと友達でいたいしね。

彼がちょっと酒に酔った時にこんなことを言ってた。

「ぼくは誰もに好かれる天使じゃなく、
 誰かに信頼されるような人間になりたいんだ」と。