お題「白と黒」

白黒ハッキリつける男コンテスト」がもしあったなら、かなりいい線までいくと思う。

おそらくベスト16には確実に食いこむことだろう。

これはオレの長所でもあり短所でもある。


「白黒ハッキリつける男・ベスト16」
の実績をひとつ紹介しよう。

数年前のこと、当時やっていたバンドが、とあるプロダクションのプロデューサーに気に入られてて
何回かライヴのブッキングをしてくれてた。

が、その人はオレが
「どうも信用できないタイプ・ベスト4」
に確実に食いこむような人だったので、
「CD出そうよ」の声には“現状ではNO”のスタンスをとって付き合っていた。

でもいくらオレが「白黒ハッキリつける男・ベスト16」だからといって
『あなたは「どうも信用できないタイプ・ベスト4」だからですよ』なんて大人気ない事を言うわけがない。

それじゃ「お前、よくわかんないけどなまいきだから殴る」。
これと同じ次元になってしまう。

こんな低次元ではない。

オレの“ベスト16”は。


そのプロダクションの看板アーティストは、20年以上のキャリアの持ち主だ。
オレはその人のレコードを持ってるし、少しだけファンだった。
“K”としとこう。

Kを取り巻くそのプロジェクトではKは“天皇”だった。“絶対”だった。
(オレはそんなのおかまいなしだったけど。)

ライヴのブッキングはほとんどKとの対バン(いや、前座だな)だった。

それまでのライヴは3組以上のバンド、ないし個人が出ていたが、その日はKとオレ達の2組だった。

ある意味、そこまで登っていったわけである。

前座であるオレ達のステージが終わった。

かなりいい感じでK目当てのお客さんにも受けが良かった。
それはアンケートにも表れていた。

そしてKのステージだ。
オレ達は後片付けの為、会場の外に出ていた。

そこでファンの1人から、オレを
“横山やすし”に変身させる事実を聞いたのだ。

そのファンの人もKのステージ上でのMCに腹を立て会場を出てきたという。

「吉田栄作みたいなルックスしてよぉ。そりゃ音楽じゃなくても女のファンは付くわな」

とか、「“カオス”という歌を唄ってたけど、意味わかってんのかねぇ?」
みたいな事を他にも言ってたという。

“ベスト16”に食いこむオレとしては当然動く。

オレだけのことじゃない。
バンドのメンバーも、オレ達を観に来てくれた人さえも侮辱したことになる。

オレがただのキレやすいお騒がせ野郎だったらそのままステージに上がって行っただろう。

ちょっとは頭をよぎったけど、それはしなかった。

相手のステージをぶっ壊して喜んでいたんじゃKと同じレベルだ。

こう見えても礼儀は尽くす男だ。

オレはKのステージの途中で「さっき唄ってて、MCのネタになったオレだぞぉぉぉ」
とアピールするように客席を通り、ステージ裏の楽屋に向かった。

客の何人かは、「うわっ!こいつ、さっきの聞いて怒ってるぅ」という顔でオレを見ていた。

おうっ!怒ってるよ。

楽屋ではKのステージを見守ってるボーヤだけがいた。
そいつの“ギョッ”とした顔を尻目に1人静かにステージが終わるのを待った。

その様相は最早“横山やすし”ではなく、ドラマの“長渕剛”が愛する者を殺され、
復讐をしに行く前にビシッとスーツを着て、「
向日葵」とか書道をしてるような静けさだったろう。

なんだか恐そうでしょ?

ステージが終わった。Kとメンバー、スタッフが楽屋に戻ってくる。

オレは微動だにせず目を伏せて、着替えが終わるのを待った。

楽屋内にいる誰もがオレの放つ異様な空気とその理由を感じていただろう。

程なくしてKの方から声をかけてきた。

「言いたいことがあるんだろう?今言っていいぞ」

まず聞いた。
「人を揶揄するのがKさんの売りにしているキャラなんですか?」と。
「それならしょうがない」とも。

泉谷しげるみたいな「愛のある悪口」のパターンもあるからね。

でもオレにはそうは感じられなかった。
Kは「悪気があったわけじゃない」とか多少威張って開き直りやがった。

悪気がないだとぉぉぉ!?こ〜の〜や〜ろぉぉぉ〜。

オレのファンは気分を害して出てきたんだぞ。

しばらく問答があったが、オレは極力感情的にならないように務めた。

相手を痛めつけるのを目的としてなかったからね。

でも一度だけオレの逆鱗に触れた。

2人の問答を見ていた誰かが、“ベスト4”を呼んで来た。

そして第一声。

「俺があやまる。殴りたいなら俺を殴れっ!」

その安いセリフはあとで思い出すと笑えたが、その時はさすがに胸ぐらを掴みそうになった。

オレの肩に置いた手を弾けるように払いのけ
「あんたが言ったわけじゃないんだから引っ込んでろっ」ぐらいに留まった。

こっちはアーティスト同士の“お話し合い”をしているのだ。
殴って解決するならとっくに殴ってるっつーの。

そんな次元で物を考えてる態度に腹が立った。

オレの“ベスト16”たる威厳をなめてるよ。
この“ベスト4”は。

“ベスト4”が続けた。
「お前には期待してるから今日もKさんに頼んで対バンを組ませてもらったんだ」

ありがたいお話しだ。

でも、それとは別の話しだ。

「そうだったんですかぁ〜。それとは知らず、すみませんでしたぁ〜」
なんて言えてたらオレはとっくにもっと出世してる。

オレには守らなきゃならないものがある。

それが“ベスト16”たるモチベイションだ。

結局、Kは口では謝ったものの、態度は最後まで先輩風を誇示していたいようだった。

取巻きの前では“天皇”だしね。

でも、ビビってたの見のがさなかったよ〜んだ。

まさか、オレみたいな
“かわいい顔した若造とこんなことになろうとは思わなかっただろうしね。

その後、期待されてたはずのオレのところに“ベスト4野郎”からの連絡は一切なくなった。

まったく、ちっちぇー野郎どもだぜっ。

わかるだろ?前回書いた「運と実力」の意味が。

物事を曖昧にしといたほうが、他者との関係がうまくいく場合も多々あるだろうけど、
白黒ハッキリさせるようなぶつかり合いをして絆が深くなっていくのも確かだ。

オレの友人はそんなんのを経て深く繋がってきた奴が多い。それは誇りだ。

リスクは高いけどね。

この日、すでに打ち上げに行ってたバンドのメンバー達が、
うなづくような顔でオレを迎えてくれたのは救いだった。

「間違いなんて思っちゃいない」
そんな顔だった。